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ベトナム勤務5年目

【甘く見てはいけない】天馬ベトナムの贈賄問題から思うこと

5月11日にこんなニュースが出てきて、

こちらベトナムではなかなか強烈なニュースとなり、

話題となりました。

 

ベトナム公務員に2500万円提供 「天馬」現地子会社

東証1部上場のプラスチック製造「天馬」(東京)のベトナム子会社「天馬ベトナム」が2017年と19年、現地の公務員に計約2500万円相当の現金を渡したとして、天馬本社が東京地検に自主申告したことが11日、関係者の話で分かった。現金提供は追徴税の減額を求める狙いがあり、外国公務員への贈賄を禁じた不正競争防止法に抵触する可能性がある。同社が設置した第三者委員会が調査していた。

この子会社が17年6月、現地の税関局による調査を受けた。調査チームは金型の輸入販売が付加価値税の支払い対象になるとして、17億9千万円相当の追徴金の支払いが必要になると指摘され、税関局職員に調整金として現金を支払うことで、追徴金を減額しようと計画。本社の経営企画部長や社長もこの方針を了承し、同月末に調査チームのリーダー側に1千万円相当の現金を提供した。この結果、調査による指摘事項はなくなった。19年8月には、税務局が子会社の法人税を調査。8900万円の追徴課税が発生する見込みと指摘し、調査チームのリーダーが子会社側に現金の提供を求めたという。子会社は天馬の経営企画部長の了承を経て、リーダー側に1500万円相当の現金を提供した。追徴課税額は最終的に約260万円相当に減ったという。

(日経新聞の記事より抜粋)

 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58928230R10C20A5CE0000/

 

この問題に対して、思ったことを書いてみます。

 

1,裏金の問題

ベトナムは、Under Table Money (別名=袖の下) と呼ばれる、公務員への裏金(賄賂)が

蔓延しており、仕事をする上での潤滑油となっています。

 

ワタクシが半年の滞在の中で、物の輸入、工場の審査、

税関や消防署等、お役所を相手にする際の、スムーズな手続きを進めるためにも

良くは無いけど (裏金を)準備した方が良いと言われてきました。

 

これの一番やっかいなのは、領収証が出ないということです。

もちろん出ないということは、経費に出来ず、

法人税として支払う税金が増えてしまいます。

そして、スムーズな取引のため、とは言え、やはり贈賄

良くない行為ではあります。

 

赴任してから、裏金への対策はどのようにするべきなのか、考えてきました。

 

領収証の出る物品(お酒、商品券等)を渡す方がマシと考えましたが、

人によって反応が異なり、現金主義の国らしく、お金を渡すのが最も良いようです。

 

この悪しき習慣には、たくさんの理由がありますが、

・公務員の給料は少ないため、裏金無しでは成り立たないと言われていること、

・海外からの投資を増やすために、税金面での優遇を受けている企業であれば、

もっとお金を払うべきといった、考えがあるとも言われています。

 

2,追徴課税を受けること

 

投資ライセンスの理解が出来ていない部分があった、

税制ルールの理解が出来ていない部分があった、

厳しい税務調査があることを理解していない、

 

こういったことの積み重ねによって、

天馬ベトナムは巨額の追徴課税を指摘された。

ように思いました。

 

ワタクシも仕事をしている中で、

税制ルールをしっかり理解しているか?

と言われると、かなり微妙で、説明してと言われると、

しっかり説明するのが難しいです。

 

難しく、複雑で、、、

 

一番やっかいなのは、それぞれの解釈によって捉え方が異なる場合があること。

コンサル会社や他の会社の意見も聞いてみると、それぞれ微妙に違うことに

悩んだりもしています。

 

とはいえ、天馬ベトナムの事例を見ると、

絶対に甘く見てはいけないのだと思います。

 

3,「会社のため」を思い、巨額の賄賂を渡す

 

もし、ワタクシが天馬ベトナムにいて、

この巨額の追徴課税を指摘され、調整金を支払って減額できるのであれば、

同じように、調整金を支払う方向で動いてしまうと思います。

 

「会社のため」を思い、そして「サラリーマン」である自分の保身

コンプライアンスより会社の損失を抑えることが最重要と認識してしまうためです。

 

三者委員会の報告書を読みましたが、「会社のため」を思っての

誤った行動が原因の一つであると記載されていました。

 

ワタクシの話ですと、天馬ベトナムとは逆パターンですが

 

日本からの出張者の所得税の支払で、

もう少し減額する措置、支払回避の対策は取れないか?

よその会社は払っていないのに、本当に支払う必要があるのか?

中国ではそんなことはなかった、等々

 

さまざまな声が本社より上がってきます。

 

ベトナムの事情はこうです。

 

と説明しながらも、曖昧な点も多くて、

何が正しいのかが分からず不安にもなっています。

 

ましてや、この不況の中、「会社のため」= 費用を掛けない と思った行動を取り

この、出張者の所得税を申告せずに、数年間放置したら、、、

税務調査で、遡及支払、罰金と追徴課税を指摘され、

減額のために賄賂支払にも繋がる。

と、考えると恐ろしい。。。

 

自分の中の前提として、

「会社のため」ではなく、「ルールとコンプライアンス」にも

しっかり重きを置いて仕事を行うべきなのだと感じたのでした。

 

なお、第三者委員会の報告書は、

聞き取り調査で賄賂を渡すシーンや、創業家と社長の社内抗争等、

色々書かれていて、池井戸作品にでもなりそうな内容もありました。

 

4,最後に

 

 こういった

ベトナムへ進出している会社の不正事例を見ますと、

 

・決して対岸の火事とは思ってはいけない、

・明日は我が身 自分の会社でも数年後にあり得る、

・天馬ベトナムで焦点となった税制ルール、投資ルールの理解、

・複数からの情報収集、

 ・「会社のため」精神は大事であるが、それだけで済む問題ではない

  世界があることの認識

 

などなど、

 

とにかく、「甘く見てはいけない」 ことを強く認識したのでした。

 

ワタクシの備忘録も兼ねて、記事にまとめました。

ここまで、お付き合い下さいまして、有難うございました。

それでは失礼しまーす!

 

 

この贈賄問題のその後ですが、、、

 

事態を重く見た、ベトナム側でも調査が進んでいます。

 

プラ製品の天馬の贈賄疑惑、ズン財政相が調査団設置

2020/05/27 12:40 JST配信

 https://www.viet-jo.com/news/social/200527080516.html

天馬ベトナムの贈賄疑惑、税務・税関職員11人を停職処分

天馬ベトナムの贈賄疑惑、公安省が日本側に情報提供を要請

天馬ベトナムの贈賄疑惑、停職の税務・税関職員全員が職場復帰

  

 真相はどうなるのか。

 

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